2012年5月 New Release

VIRGIN
exist†trace
発売日:2012.5.23

以前からその人気は国内に留まらず、世界的にも大きな反響を浴びているexist†trace。今では様々なスタイルに広がりを見せているガールズ・ロックという広いカテゴリーの中でも、そのサウンド、パフォーマンスと、実力はピカイチと目されているだけに、本当の意味で躍進への第一歩となるこのアルバムは要注目の一枚だ。先発のミニ・アルバムの楽曲が数曲含まれるこの構成は、去年のリリースから本当の意味でスタートラインに立つための入念な軌跡を作り上げた集大成とも見て取れる。
作品を通して聴くと、芯となるポリシーのような部分と対比して、アイデアが豊富、というより“あれ?これをやるか?”的な意外性のあるフィーリングが、時に程よいタイミングで現れ、気持ちのよい緊張感を与えてくれる。シリアスで重い雰囲気が思い浮かぶ彼女らのイメージの中で、例えばM4,M11のようにグルーヴ抜群のシャッフルが2曲あるのは、更に彼女らの世界を広げる要素を、際物で終わらせない気構えなのかもしれない。
ファンには待ちに待たされたこの1stフル・アルバム、厚みを増したその世界観は、新しい彼女らの魅力を見せてくれると共に、今後の成長を大いに期待させてくれることだろう。器は十分、あとはどう羽ばたいていくのか?その動向には益々目が離せない。

TEXT: 桂伸也

Dreaming Eyes
Rie a.k.a. Suzaku
発売日:2012.5.9

前作、前々作と、サウンド的には硬質なヘヴィ・メタルサウンドを追求したRie a.k.a. Suzakuだが、本作は一皮剥けた印象のある作品になっている。全般的に曲作りに対して凝りに凝りまくったという今までの傾向に対して、もっと肩の力を抜いたような、リラックスした雰囲気がある。元々メロディに光るセンスを持っている彼女だが、今回は更にサビのメロディがグッと聴くものを惹きつけ、気分を高揚させてくれるような魅力を感じさせてくれる。作曲に対して、リスナー目線を意識したような作風ともみられる。特にM3等は、よい意味でそのままアニメの主題歌になるのではないかと思えるくらいに、キャッチーな仕上がりになっている。また、他方ギター・プレイには、今迄では余り目立たなかったフル・ピキングでのギターを披露するなど、新しい挑戦に躍進する姿も見せているようだ。制作過程の中で妥協を許さない彼女だけに、楽曲の完成度はかなり高く、今迄の作品にも増して聴き手側に受け入れる作品が出来上がった。更に自分の世界をまた一回り広げてくれた。女性アーティストという枠すら超えて、どこまでその可能性を広げてくれるだろうか?心して見届けるべし。

TEXT: 桂伸也

Shocking Loud Voice
DAZZLE VISION
発売日:2012.5.4

このバンドのヴォーカリストMaikoの特徴は方々で語られているが、クリーン・ヴォイスと、凶悪なデスヴォイスを巧みに使い分けるところだが、本作品では言葉通り7色の顔を持つというべき表情の豊かさを見せている。かつ、マルチな面を持ちながらも、器用貧乏に終わらない彼女ならではの表現力の豊かさは特筆すべきポイントだ。そんな彼女のヴォイスを存分に発揮する楽曲群とサウンドも、シャープな完成度を感じさせる。楽曲を流して聴いただけでは、その真意は理解できないかもしれないが、例えばM1のように、歌詞を理解しながら歌を追うと、恐らく多くのリスナーは彼らの世界観にグッと気持ちを引き込まれるのではないだろうか。様々な音楽性を吸収し展開するこの音世界で、唯一感じられないのはクラッシック音楽のような伝統を感じさせる旋律のみか。しかしそのポイントさえも打ち消してしまうような美しいハーモニーやメロディがあり、全く隙のようなものが見られない。まだ彼らに対する世の認識はこれからとはいえ、既に高い評価を集めているステージ度胸の強さと、この作品にある制作意識の高さには、これからのスターダムすら当然と思えてならない。間違いなく要注目だ。

TEXT: 桂伸也

Neverworld’s End
XANDRIA
発売日:2012.5.9

ドイツ出身のベテラン・シンフォニック・メタル・バンドによる6作目の作品。同時期にリリースとなるDIABULUS IN MUSICAと、シンフォニック系のサウンドという面で共通はしているが、こちらは‘正統派’‘王道’という形容がよく似合う、ストレートな作風こそが特徴だ。そのメロディ、ハーモニー共に、NIGHTWISHやWITHIN TEMPTATION等が作り上げてきたシンフォニック・メタルのイメージをピュアに継承し、より厚みを増したような印象がここにはある。贅沢なまでに鳴り響くようなストリングスやクワイアの響きと、その音の広がり、サビの壮大さを極限にまで引き上げたようなその作りは、正にベテランと言えるような経験によるもの、また、職人気質な人たちの意気込みすら感じさせてくれる。多くのフォロワーを排出し、もはや‘どれを聴いてよいのやらわからない’という状態に向かい始めてしまったシンフォニック・メタルのなかでも、これは賭け値なしに安心して聴けるサウンドとして十分おススメできる。培ったノウハウとセンスを存分に披露し、決して間違いのないサウンドに仕上げているのは見事。本物を求めるシンフォニック・サウンド・マニアには必聴の一枚。

TEXT: 桂伸也

The Wanderer
DIABULUS IN MUSICA
発売日:2012.5.9

近年時折見られるメタルの傾向としてデスヴォイスとクリーン・ヴォイスの使い分けを行うサウンドがあるが、このDIABULUS IN MUSICAもこのサウンド形態をポリシーとしており、彼らの方法論では、これをシンフォニック的な美しい女性の声と、凶悪なデスヴォイスを男性が担当するという、完全に性格の異なるヴォーカリストを織り交ぜた形を取っている。二つの声を織り交ぜた上で感じられる効果は、キャッチーで良質なメロディを形成しつつ、かつダイナミックなアクセントをつけることで、曲の中にある奥行きやダイナミクスのレンジを、幅広く形成できるところかと思われるが、これらのサウンドの中では、全く異なるヴォーカリストを起用することでポリシーがより明確に見える。
他方、b9系のハーモニーをトニックとした刺激的なバッキングを多用したイントロは、彼らの独自性を強調している他、時折見られるクワイアの荘厳さや、メロディの中に見えるスパニッシュな風味、民謡的な雰囲気のメロディ等、持ち味も独自で、また一歩進化したメタルの姿とも見えるようだ。

TEXT: 桂伸也


andymori
発売日:2012.5.2

「光」ある方へ 「光」ある限り

bass 藤原寛 / vocal & guitar 小山田壮平 / drums 岡山健二の3人からなるandymori 4th album「光」。昨年10 月から制作をスタート、セルフプロデュースによるレコーディングにより完成した全11曲。どうにもならないほどの不安や悲しみが渦巻く世界の中でも、自分達の音楽が一筋の光となるようにという願いから完成した今作は、かつてないほどにシンプルであたたかく潔く、そして力強い。
「好き」「愛してる」「光」「旅」「想い」「踊ろう」「声」「歌」そんな、一見あたりまえだけれどもとても大事な言葉を想いとして伝えていく事に心血を注いでいるのが良くわかる。
仲間のことを歌った曲から友人への想いを綴った曲、ライヴの光景を思い浮かべて鳴らされた曲、そして音楽への愛を歌った曲まで、バラエティに富んだ楽曲が並んでいるが、全てを聴き終えた後で彼等が奏でて歌う「光」とは「愛」から生まれる輝きの事なのだと気付く。

TEXT: ☆はらひであき☆

Schwarzenegger
[Champagne]
発売中

「言え」「spy」のシングル2曲搭載の決定打!

インディーズ流通ながらもオリコンのウィークリーチャートでは10位初登場(その後も驚異のロングセール中!)、ライヴは全国どこでも完売、昨年は8本のフェスに参加し、今年1月のKASABIAN来日公演のオープニングアクトでは洋楽ファンをも魅了した今まさに天井知らずのバンド[Champagne]。一体この勢いでどこまで進撃を続けるのか、もはや見当もつかない。『Schwarzenegger』などという、またしてもニヤリとする確信犯的アルバムタイトル。このわざとすっとぼけたようなシニカルなセンスからしても一筋縄ではいかないが、楽曲群のレンジの広さにも驚かずにはいられない。1曲毎に趣向を凝らし、テンポやリズムや曲調も「なんでも出来るぜ」とばかりにあらゆる方向に展開させながらも決して散漫にはならず、エッジの鋭いロックンロールが踊る珠玉の作品。少なくとも日本人云々の域はとっくに越えた次の地平(ポイント)に彼等はいる。

TEXT: ☆はらひであき☆