2008年3月1日― 。この日は日本のヘヴィー・メタル史上において、後世語り継がれるであろう重要な日になることは間違いない。何故なら、1983年に44MAGNUM とMARINO、44MAGNUM とEARTHSHAKERという組み合わせによって新宿LOFTへ“殴り込み”をかけたGIG以来、実に25年ぶりに、この関西3大メタルバンドが初めて揃った奇跡のライヴが行われたからだ。中野サンプラザホールには、約2000人の観客が“鋼鉄の饗宴”の目撃者となり、歴史の体現者となった。今回WeROCK Cityではその“歴史に残る饗宴”のドキュメントを追うことにした。
まず、サウンド・チェックが正午から、本番とは逆の44MAGNUM、 EARTHSHAKER、MARINOの順に始まった。ステージ・セットは、中央のツーバスのドラムと、左右に設置されたマーシャル・アンプの壁に覆われていたことが、3バンドの特徴と拘りを表していたといえる。最後のMARINOの番が来ると、JimmyとSharaが並んで客席の中央付近に座り(おそらくギタリスト同士、魂揺さぶるRavenのプレイが気になっていたのだろうか)、真剣に見入っていた様子がやけに印象的だった。
開演前には既に長蛇の列を作って入場を楽しみにしていたファンが、16:00の開場とともに一斉にホールの中に吸い込まれていった。その奥で待っていた光景はグッズ売り場に並ぶ、最後尾が見えない列・列・列!入り口付近はとにかくグッズを求めるファンでごった返し、さらに1、2Fのロビーではお酒を片手に談笑するグループや各所で挨拶を交わす業界関係者の姿も見受けられた。この公演を楽しみに集まった者達が開演までの時間、それぞれの想いを持って、刻々と迫るその瞬間を待っていた。そして17:00、ついに歴史の幕が開いた。
トップバッターであるMARINOの登場である。“ストラトの魔術師”の異名を取る、Ravenのスーパーソニックな速弾きは初っ端から冴え渡り、繰り出すプレイは圧巻の一言。改めて、彼のギター・テクニックに魅了された人も多かったはずだ。ヴォーカルのLeoは全く衰えを感じさせず、声はホール全体に響き渡っていた。選曲も全アルバムをほぼ網羅するような全9曲で構成され、名曲「Shake Down」でボルテージが一気に高まった。そして、ラストを飾った「Impact」では、MARINOのステージで最も熱気に包まれたエンディングとなった。
MARINO:
吉田“Leo”隆(vo)
大谷“Raven”令文(g)
鎌田“Mr.Kamada”学(b)
板倉“Jun”淳(ds)
MARINO Set List:
1.Midnight Believer
2.Break
3.約束の丘
4.Brave As A Lion
5.Shake Down
6.Target
7.Faraway
8.From All Of Us
9.Impact
そして、次はEARTHSHAKER。この日演奏されなかった「T-O-K-Y-O」「記憶の中」「流れる赤い血はなぜ」などを繋いだSEの中、大歓声に迎えられ登場。彼らの代表曲「Earthshaker」でスタート後、4曲目に入る直前のMCでmarcy が3月12日に発売されたニュー・アルバム『Quarter』及びツアーの告知を行い、この夜、「やる!」と力強く宣言した上で、新曲「愛の技」「欠片」の2曲を披露した。このあたりは“現役バンド”としてのプライドや拘りが感じられた。長い間活動しているベテラン・バンドならではのパフォーマンスは、むしろホールが狭く感じるくらい堂々たる貫禄を我々に見せつけた。そして、ラスト・ナンバーを飾ったのは「Radio Magic」。観客全員による大合唱でこの日のステージを終えた。
EARTHSHAKER:
西田“Marcy”昌史(vo)
石原“Shara”慎一郎(g)
甲斐“Kai”貴之(b)
工藤“Kudo”義弘(ds)
EARTHSHAKER Set List:
1.Earthshaker
2.Wall
3.Come On
4.愛の技(新曲)
5.欠片(新曲)
6.Garage
7.Fugitive
8.More
9.Radio Magic
最後は、今回のトリを務めた44MAGNUMが満を持しての登場。かつて彼らも“日本のMOTLEY CRUE”と言われた頃もあった、そのMOTLEY CRUEの「Live Wire」が流れた。そして客電が落ち、「ETのテーマ」がSEとして流れていた間、かつてのステージを知っているファン達は、完全に昔のライヴ会場にフラッシュバックした事だろう。しばらくしてメンバーのシルエットが見えてきた時の割れんばかりの大歓声、44MAGNUMがついに復活を遂げた瞬間だった。今回Paulの体調も気遣って、実の息子であるStevieがサポートし、5人体制でステージに立った。それでもPaulの不変のハイトーン・ヴォイスと、観客への煽りが上手いMCは見事に健在だった。普段クールなイメージが強いJimmyはフライングVギターを激しく弾き鳴らし、このステージにかける想いを全身で表現しているようだった。BanはStevieと共にステージを所狭しと駆け回り、今回のライヴを一番楽しんでいるように感じられた。Joeは数々のセッションを務める現役バリバリの安定感に加えて、ダイナミックなドラミングを披露。戻るべき場所へ戻ってきたと感じさせる、納得のプレイだった。12曲目の 「Too Late To Hide」が終わった後、Paulが観客に“We Want More!”と煽りかけ、その声に導かれるようにmarcy、Shara、Leo、Raven、そしてJunが再登場。3バンドのセッションによるアンコール曲、「Satisfaction」で会場のムードは最高潮に達した。途中Raven、Shara、Jimmyによるギターソロ・バトルでは、同じステージに3人が立つ勇姿を目に焼き付けるのに必死だったファンも多かったはずだ。また、JimmyがRavenのギター・ソロの際、突然土下座して見せたり、Sharaが弾いている背後に行き、羽交い絞めにするなど、お茶目におどけたシーンを連発。そういったアクションでさらに友情を深めた様子が伺えた。そして、演奏終了直後、Jimmy、Joe、Banがそれぞれハグし合う場面では友情の絆がピークに達し、とても感動的で印象的なエンディングを迎えた。実に25年ぶりの“鋼鉄の饗宴”は圧倒的な盛り上がりを見せながら、その幕を閉じた。
44MAGNUM:
梅原“Paul”達也(vo)
広瀬“Jimmy”さとし(g)
吉川“Ban”裕規(b)
宮脇“Joe”知史(ds)
Stevie(vo)
44MAGNUM Set List:
1.Your Heart
2.The Wild Beast
3.No Standing Still
4.I'm On Fire
5.It's Too Bad
6.Nightmare
7.You Love Me,Don't You?
8.She's So Crazy. Make Me Crazy
9.Street Rock'n Roller
10.I Just Can't Take Anymore
11.Lock Out
12.Too Late To Hide
<Encore>Satisfaction
今回特筆したいのは、歴史的な“鋼鉄の饗宴”のドキュメント映像でも感じとって頂けると思うが、何十年も楽しみに待ち続けていたという、3バンドを観に来たファンが今でも変わらず“熱い”ということである。青春の真っ最中に彼らのレコードを聴き、時には激しく、時には甘く切なく…それぞれの経験を通して大人になった。この“鋼鉄の饗宴”では、観客が一斉にタイムワープして、その時の自分に会えたに違いない。ありがとう、25年ぶりの感動を…。そして映像に登場してくださった熱いファンの皆さん、ありがとう。そのお陰で、ファンからのメッセージを観たメンバーを刺激し、“饗宴-続編”に繋がることを期待したい。
そう、最後に、Paulはファンに向かって今後何らかの形での再会を約束してくれた。とにかく、今回44MAGNUMはファンとの間の年月を埋める努力を形にする為、仲間のEARTHSHAKER、MARINOを伴って、その隔たりをステージで一気に縮めてくれたのだ。たとえ、その約束はいつ頃、どんな形になっても、待つ価値はあるだろう。この空気を共有したファン達は、静かにその時を待つはずだ。でも、これだけは言える。当日の盛り上がりから考えると、そう遠い未来の話ではないはずであることを。






